T.総論(彫る前に…)

A.「木版画・ゴム版画」って何?
B.ゴム版と木版
C.版下(原画)の写し方
D.彫刻刀の種類と使い方(1)
E.彫刻刀の種類と使い方(2)
F.摺りの道具

   C.版下(原画)の写し方

方法 利点 欠点 適応
直描き 早い
ペンと版だけでできる
絵柄を選ぶ
多版に使えない
ゴム板(単)
木版(単)
<単版>
トレーシングペーパー 汎用性が高い
多色に使いやすい
正確
少し見づらい
線が太くなることもある
煩雑(道具が多い)
ゴム版(単・多)
木版(単・多)
<大体何でも>
和紙貼り付け 正確
伝統的技法
彫りにくくなる
煩雑
木版(単・多)
<浮世絵>
鉛筆転写 見やすい
自分で修正できる
連続使用不可
擦ると消える
ゴム版(単)
<写真>
プリンター転写 正確
印刷枚数自由
手間がかかる(絵)
乾くと使えない
用紙による適応がある
ゴム板(単・多)
<文字>


・絵を写す!

↑こんな写真も
がんばれば写せるはず…
 版画で、いきなり彫れる人は相当な達人でしょう。もしくは、原画にこだわらず質感やデザイン性を求める場合、偶然生じる彫りの味を生かす場合などでしょう。

 ですが、一般的には版木に絵を写す必要があります。絵を描いただけでは終われない、版画の少々めんどくさい部分かもしれません。

 その方法は多彩で、古くから行われている和紙を貼り付ける方法や、直接描く方法などもありますが、ここでは私が主に用いる、3通りを解説します。


・オールマイティー トレーシングペーパー
 現在、私が最も用いている方法です。

1.原画をトレーシングペーパーで写します
2.裏返してカーボン紙で版木に映します

 非常に簡潔で、分かりやすいですね。しかも1枚版下を作れば何枚でも写せますので、多版多色にも向きます。

 難点があるとすれば、非経済的なことくらいですね。


・単色専門? 鉛筆転写




 
 ちょっと前まで、よく使っていた方法で、単色版画に向いています。

 左の写真は絵を描いているのではなく、絵をなぞっているところです。こうやって即席のカーボン紙を作るわけです。

 これを裏返して、版木に当てて、固定。カッターの柄などで擦ります。

 すると版木に絵柄が写ります。(見づらいですが、3枚目の写真)

 この方法の利点は、写真や自分で描けない絵を写す場合に、直接見ながら行える点です。トレーシングペーパーを使うと見づらくなる場合に向いています。

 ただし、この方法、一回しか鉛筆が残らないばかりか、紙が傷むので、単色専門といえるかもしれません。


・文字に強い プリンター転写
 自慢でもなんでもない、というか、反省点なんですが、私は字が下手です。とてもじゃないですが、版木に逆さにして写すなど出来ません。

 そこで考えたのが、プリンターを使うこと。

1.安めの紙に文字などを印刷します
2.乾かないうちに版木に固定します
3.鉛筆転写同様、擦ります

 これで苦手な字も美しく、版木に写りますので、自分のスタンプや落款もどきもつくれます。